独立記念日┃原田 マハ【著】あらすじ・感想ー人生は小さな“独立”の繰り返し

小説

この小説に出てくる女性たちと同じような経験や悩みを感じたことがある人は、きっと多いと思います。読了後、溜め込んでいた心の膿がようやく取れたような、スッキリと気持ちよい感情でいっぱいになりました。


独立記念日 (PHP文芸文庫)

 

あらすじ

恋愛、結婚、仕事、キャリア、家族、人間関係、病気など…

自分を悩ませる様々な問題。小さなものから大きなものまで、現状を打破できずその問題に縛られている間は苦しいけれど、ふとした瞬間、その呪縛から解放されて「さぁ前に進もう」と清々しく思える日が来るのです。

この小説は、人生のさまざまな問題に悩み苦しむ女性たちが、呪縛から解放されて新しい人生を歩きだしていく物語の短編集です。

オリジナル感想文 ネタバレなし

小学生時代のこと。
クラスに自分の思い通りにならないとあからさまに不機嫌になり、周囲に当たり散らし、ワガママ放題でみんなを困らせる女の子がいました。

その女の子の名前は「さとみ」。あだ名は「さっぴぃ」。

さっぴぃはクラスの女の子たちの間で、「女版ジャイアン」的な存在として恐れられていました。
みんな、さっぴぃの機嫌をビクビク伺いながら愛想笑い。なぜそうするのかと言うと、さっぴぃに反論したり意見すると、いじめの標的にされてしまうからです。

根も葉もない噂話や悪口、陰口を周りに言いふらして、いじめの標的にされた子は孤立していきました。

そんなさっぴぃを恐れて、女の子たちは同調や愛想笑いをするばかり。
でも、さっぴぃの“お気に入り枠”に入れられて、まるでさっぴぃに仕える召使か奴隷的な立ち位置に成り下がってしまうのも嫌なものです。

さっぴぃから離れたい。さっぴぃから離れられたら、もっと他の友達と好きなように遊んだりできるのに。自由になれるのに。

❁❁❁

社会人になって会社で働きはじめても、さっぴぃのような人間は存在します。

噂話大好き。陰口大好き。話しやすい同僚を捕まえて、味方につけては仕事中でもコソコソ、ヒソヒソ話が止まらない。

噂話や陰口、悪口、愚痴でつながる職場の人間関係。
適当に話を聞いておいて、時に同調や共感したフリをして、精一杯の作り笑顔で乗り切る。

心の中では「あっかんべー」をしながら、それでもその人間関係の呪縛から離れられずにいる。

❁❁❁

人生の中で、このように日々の生活レベルでも私たちを生き辛くさせる要素はたくさん存在しているんだと思います。

あぁ、うるさいなぁ。面倒だなぁ。ムカつくなぁ。うざいなぁ。疲れるなぁ。

呪縛された日常が「当たり前」に感じ、心が荒んでいって自分自身を無くしてしまうけれど、その呪縛から解放されるのは、案外日常の些細なことの出会いや気づきだったりするのかもしれません。

そういう小さなきっかけは、ある時突然出会うもの。
人かもしれないし、場所かもしれないし、物事かもしれない。

そのきっかけによって、自分の閉ざされた気持ちの扉が解放され、呪縛された日々から「新しい人生のスタート」が始まっていくのだと思います。

人生には結婚や出産、進路、キャリア等人生の選択を迫られるような大きな岐路に立たされることもあります。でもそれだけじゃなく、前に進めずモヤモヤ悩み苦しんだり、傷ついたりすることは日常にたくさんあります。

それでも世界は回っていて、毎日ちょっとずつ違うのです。それと同じく、私たちも皆、毎日ちょっとずつ違う景色を見たり、さまざまな感情を抱いたりしながら、変わっているのだと思います。

きっかけは日常の小さな出来事でも、それが自分を変える大きな一歩になる。

小さな独立を果たして自由になり、新しい人生のスタートを歩き出すこの物語の女性たちは、とても逞しく清々しく感じました。

 

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