引用:「この恋は世界でいちばん美しい雨」宇山 佳佑
宇山圭佑さんの“泣ける恋愛小説”として気になっていた小説。
恋愛小説って今まであまり得意じゃなかったけど、初めて時間を忘れてのめり込み、感情が揺さぶられる小説に出会えました。
切なくて、悲しくて、胸が苦しくなるシーンが多いけれど、ほんのりあたたかさも残る小説です。
小説のあらすじ
建築家として駆け出しの誠と、カフェで働く日菜は恋人同士で同棲中。いつか、ふたりで暮らす夢のマイホームを建ててあげたいと思う誠とそれを応援する日菜だが、ふたりはある雨の日に交通事故で瀕死状態になってしまう。
誠と日菜は瀕死状態から生き返ることになったが、条件としてお互いの余命を奪い合いながら生きていく「ライフシェアリング」をすることになる。
誠と日菜が命を奪い合い、互いを思って最後に選択するものとは―。
こんな人に読んでみてほしい
- ファンタジー系の小説が好きな人
- 恋愛小説が好きな人
- 最近ちょっと恋愛感情に乾いていて潤したい人
- 若いころの恋愛を思い出してきゅんきゅんしたい人
- 本当に人を愛するとはどういうことか?考えたい人
小説を読んで~気づき・学び・感想
はじめに、「シェア」という言葉を聞いてどんなイメージを持つでしょうか。
- おいしいご飯をみんなで「シェアする」
- 学校や職場で、仲間たちと意見や感想を「シェアする」
- ネットニュースの記事をSNSで「シェアする」
- おもしろいものや楽しかったものをSNSで投稿して「シェアする」
- 車は購入するのではなく、「カーシェアリング」で利用する
- 「シェアハウス」で複数の人たちと共に生活する
他にもいろいろな「シェア」が思い浮かんでくると思いますが、シェアには人の優しさや親切、明るさ、前向き、楽しい等、ポジティブな意味で使うものだと思います。
☔
この小説から感じたのは、“恋のキュンキュン”よりむしろ、苦しく悲しい恋愛のきもち。
感想を書きながら改めてパラパラと本をめくっているだけでも、何度でも切なくて苦しい気持ちで胸がいっぱいになります。
こんなにも残酷な「シェア」と、愛おしくて悲しい「雨」があるのか…と。
普通、好きな人の喜ぶ顔が見たいから何かをしてあげたくなるものだと思います。
嬉しいことや楽しいことは、お互いにシェアして2倍になって、悲しいことや辛いことはお互いにシェアして重荷を軽く。
お互いの気持ちはシェアすることで一緒に大きく膨らんだり、しょぼんと縮んだり、同じ形になれば幸せだなと思うのですが。
☔
好きな人に幸せになってほしい、好きな人が幸せならそれで十分、だから自分にできることを「シェア」する。
そうは言っても、何があっても自分を犠牲できる覚悟を持つことは簡単ではないと思います。
自分に余裕がなくなると相手を傷つけてしまったり、自分に得がある方を選んだりしてしまうかもしれない。
☔
誠と日菜が、ライフシェアリングをする中で苦しみ、お互いを真剣に想い、最後に下した結論と行動。
読了後、何とも言えない悲壮感が体中に漂いました。